デビュー10周年を迎えた吉澤嘉代子が、2024年10〜11月に全国11箇所を巡るトライアングルツアー《旅する魔女》を開催。11月29日（金）ヒューリックホール東京にて行われた追加公演の模様をレポートする。

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2ヶ月に及ぶ旅の終着地は、東京。吉澤、梅井美咲（Pf）、細井徳太郎（Gt）による巡業の集大成を見届けるべく、多くのファンが駆けつけ、チケットは完売となった。今回は10周年記念ツアーということで、ライブ人気曲を中心としたセットリストとなっていて、追加公演ではこの日のみ演奏した楽曲を含む全18曲を披露。3人編成によるシンプルなアレンジは、楽曲の魅力はそのままに新鮮な聴感が楽しめ、長年応援してきたファンも初めて彼女の音楽に触れる観客も虜にした。

 

会場が暗転すると、客席後方に“旅の一行”が登場。観客が拍手で迎える中、3人はランタンを手にフロアを横切り、演奏の舞台へと向かう。ステージにたどり着いた吉澤が深々とお辞儀をして、「らりるれりん」でライブが開幕。温かなギターの音色やダイナミックな鍵盤と共に、吉澤はゆったり艷やかに歌い上げる。

 

梅井のエネルギッシュな演奏がリズムを牽引する中、アップテンポで届けた「月曜日戦争」では、観客が一斉にペンライトを点灯。光に包まれた客席を見て吉澤は「ありがとう！」と喜ぶ。続く「鬼」では吉澤が椅子から立ち上がり、観客のクラップに身を任せてノリノリに。《ぐっとぐっと食縛って》と歌う場面では、思い切り“間”を溜めて歯を食いしばってみせ、楽曲の後半ではステージから降りてフロアを練り歩く。こうした自由なパフォーマンスが行えるのも少人数編成の見どころであり、3人は息ぴったりの演奏で魅せていく。

 

客席で「鬼」を歌い終えた吉澤は「本日は《旅する魔女》追加公演です。ヒューリックホール東京に、旅の一行は無事たどり着きました！　みなさんのおかげです」と挨拶。ステージに戻り、旅の思い出を振り返る。神戸公演には兵庫県出身の梅井の家族も訪れたそうで、吉澤は「大切な人を呼んでくれるって嬉しいなと思って、心に残っています」と述べ、本公演に細井と吉澤の家族も見に来ていることを明かした。そして「今日は最後の夜になるので、噛みしめ噛みしめ、楽しんで、味わい尽くしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします」と意気込んだ。

 

「綺麗」では、胸に手を当て切々と歌を紡いでいく吉澤。抑揚をつけた鍵盤の調べや寄り添うように爪弾かれるギターが、歌詞に込められた愛の狂気を増幅させるようだ。スローテンポにリアレンジした「グミ」では、まるで歌詞にある《私の神様》に祈りを捧げるように絞り出し歌い上げる。さらに、打ち込みのビートを交えて「魔法はまだ」を歌唱。躍動感のあるアンサンブルに、観客は体を揺らした。

 

続いて、ツアー前にファンから募集した“吉澤嘉代子の楽曲にまつわる思い出”を紹介し、今回読み上げたエピソードに紐づいた楽曲「おとぎ話のように」を披露。この曲は南波志帆に提供した曲のセルフカバーで、ワンマンライブではほとんど披露したことがない貴重なナンバー。世知辛い芸能界で強く生き抜く南波を想像して書かれたものだが、この日は10年駆け抜けてきた吉澤の姿とも重なり、10周年記念ツアー最終公演を飾るにふさわしい1曲となった。

 

ここで吉澤は「ツアーの中で旅の曲をカバーしていたんですけど、今日だけのために練習してきた曲をお届けしたいと思います」と、その楽曲に対する思いを語る。「子供の頃は聴いていると切なくなりすぎてしまって、さみしい気持ちになる曲だったんですけど、この2ヶ月全国を旅して廻ってきたときに、帰ってくる場所があるから自分を奮い立たせられるんだなと思って、すごく好きになった曲でした」と、映画『耳をすませば』の主題歌としてお馴染みの「カントリー・ロード」をカバー。寂しさをじっと堪らえるように声を震わせながらも、次第にやさしく温もりを帯びていく歌に、目頭が熱くなった。

 

「サービスエリア」「えらばれし子供たちの密話」では一転して、ステージは妖しい空気をまとっていく。リズミカルなギターがグルーヴを作りながら、摩訶不思議な世界に観客を引き込む。次の「地獄タクシー」では真っ赤な照明で会場が染まり、細井が扮するタクシー運転手が奈落の世界へと誘う。張り詰めたギターサウンドや重心の深いキーボードの音色が、おどろおどろしさを醸す舞台装置となっていた。

再び、ファンから集めた楽曲の思い出を紹介した吉澤は「みなさんの中で私の曲が人生のBGMになっていること、光栄に思います」と感謝して「東京絶景」を歌い上げる。会場全体に美しく響き渡る歌に、吉澤が奏でる柔らかなアコースティックギターと梅井の繊細な鍵盤の音色、そしてエモーショナルな細井のエレキギターが加わり、感情を揺さぶる。さらに「残ってる」「涙の国」では、か細さと強さを併せ持った歌や歌詞に応じてニュアンスを変えたキーボードが、楽曲のざらついた質感を引き立てる。

 

「いつもしゃべるのが下手だなって自分で思っているので、台詞を書いたり台本を用意したりして。特にツアーなんて、最後のほうにちょっと感動するようなことを言わなきゃいけないみたいなやつがあって…そういう雰囲気に持っていくのが嫌で、それだったら全部決まっていることを磨いていこうと思って（台本を作って）やってきました。でも今回はデビュー10年を記念するツアーということで、自分の言葉で気持ちを伝えたいなと思って、私の中ではあまりないツアーになりました。最後は言うことなくなるんじゃないかなって思っていたんですけど、歌っているうちにどんどんどんどん想いが出てくるというか。毎回、いま目の前にいる人に歌いたい言葉が溢れてくるものなんだなって。すごく楽しかったし、素直になれたツアーでした」と率直な気持ちを伝えた。

 

そして「ライブもそろそろおしまいになるんですけれども、心ここに歌います」と述べ、命を賭けた堕天使との恋を描いた「ルシファー」を歌唱。登場人物の身を焦がすような熱い想いが歌から伝播するように、会場全体の熱も高まっていく。その幻想的な世界観と地続きで演奏したのが、本編ラストの「刺繍」。言葉のひとつひとつを噛みしめるように歌った吉澤は、最後に深くお辞儀をしてマイクを置いた。

アンコールでは、2025年1月に放送開始するアニメ『誰ソ彼ホテル』のオープニング主題歌として書き下ろした新曲「たそかれ」を披露。めくるめく展開と流れるようなメロディにより、楽曲の世界に吸い込まれていくナンバーだ。改めてファンに感謝の気持ちを伝えた吉澤は「最後に1曲、弾き語りをします。今回の《旅する魔女》でずっと思い出を募集していたんですけど、その中でダントツで多かった曲を歌いたいと思います」と、アコースティックギターをかき鳴らしながら「ミューズ」を力強く歌い上げる。曲終わりにアカペラで歌った《戦っている貴方はうつくしい》という言葉は、彼女の音楽に力をもらっているファンたちに向けたメッセージにも思え、感動的な余韻を残した。

ツアーは大団円を迎えたが、10周年アニバーサリーはまだまだ道の途中。この日発表があった通り、2025年2月19日には「たそかれ」のCDリリースを、4月20日（日）には東京・日比谷野外大音楽堂にて10周年を締めくくる単独公演の開催が控えている。その旅路を引き続き見守りたい。

 

文／神保未来
カメラマン／山川哲矢
ヘアメイク／永本陽奈
衣装／圓子槙生

 

セットリスト
1.らりるれりん
2.月曜日戦争
3.鬼
4.綺麗
5.グミ
6.魔法はまだ
7.おとぎ話のように
8.カントリー・ロード（カバー）
9.サービスエリア
10.えらばれし子供たちの密話
11.地獄タクシー
12.東京絶景
13.残ってる
14.涙の国
15.ルシファー
16.刺繍
En1.たそかれ
En2.ミューズ

 

■吉澤嘉代子デビュー10周年の締めくくりとなる日比谷野外大音楽堂、単独公演
2025年4月20日(日)
会場：日比谷野外大音楽堂
時間：開場 17:00/開演 17:45
チケット料金：グッズ付き前方指定席：11,000円（税込） / 指定席：8,800円（税込）

【バンドメンバー】
ゴンドウトモヒコ(Bandmaster, Horns, Sequence)
伊澤一葉(Keyboard)
弓木英梨乃(Guitar)
伊賀航(Bass)
伊藤大地（Drums）

 

 

2025.2.19 Release
New Single「たそかれ」
詳細/ご予約：https://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A026841.html

【初回限定盤(CD+DVD)】VIZL-2405
¥5,400(税抜) / ¥5,940(税込)
■CD(通常盤と同内容)

■DVD
「旅する魔女」
2024年10月25日(金)キリスト品川教会 グローリア・チャペル
・らりるれりん
・月曜日戦争
・鬼
・綺麗
・グミ
・魔法はまだ
・やさしさに包まれたなら
・サービスエリア
・えらばれし子供たちの密話
・地獄タクシー
・残ってる
・涙の国
・ルシファー
・刺繍
・たそかれ
・東京絶景

【通常盤(CD)】VICL-37755
¥1,400(税抜) / ¥1,540(税込)
■CD
[収録楽曲]
1.たそかれ (作詞・作曲：吉澤嘉代子　編曲：横山裕章)
2.たそかれ -ピアノと歌-　(作詞・作曲：吉澤嘉代子　編曲：伊澤一葉)
3.舞台 (作詞・作曲：吉澤嘉代子　編曲：ゴンドウトモヒコ)

 

【アニメ限定盤(CD)】VTCL-35382
¥1,300(税抜) / ¥1,430(税込)
■CD
[収録楽曲]
1.たそかれ
2.たそかれ -ピアノと歌-

(アニメ限定盤・封入特典)
「誰ソ彼ホテル -蕾-」特典シリアルコード
・吉澤嘉代子命名のオリジナル称号
・ゲームお役立ちアイテム
※特典の受け取りは1アカウントにつき、1回のみとなります。
※特典および仕様は予告なく変更になる場合がございます。
※シリアルコード入力方法は、後日発表いたします。

【ビクターオンラインストア限定バンドル商品】
10周年を記念して撮り下ろされた特別なフォトブック付き
・初回限定盤＋フォトブック ￥6,400 (税抜)/￥7,040(税込)
・通常盤＋フォトブック ￥2,400 (税抜)/￥2,640(税込)
・アニメ限定盤＋フォトブック ￥2,300 (税抜) /￥2,530 (税抜)

ビクターオンラインストアにてオンラインサイン会開催
詳細：https://victor-store.jp/special/yoshizawa202501